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秀が起きるのを待ち、皆で田圃に出た。 蚊取り線香と虫除け入りの蝋燭、水の入ったバケツ、それから、沢山の花火を手にして。 「ふわ……っ、風が気持ちいい……っ」 山を越えて吹く風が、さやさやと緑と水の香りを運んでくる。 田圃は泥臭いイメージだったが、夏の夜は懐かしさを感じさせる香りがした。 「夏はやっぱりコレ!」 「うひょひょ」 思い思いに手にした花火。 綺麗な花を咲かせる物があれば、弧を描いて飛んで行くものもある。 「やべえ!皆、逃げろ~!」 「「うわ~~!」」 いきなり連発の打ち上げ花火が飛び、慌てて避けて用水路に落ちたりもする。 「毎年誰か落ちるよな」 「これも恒例行事だし」 「凄い……。こんなに賑やかな花火って初めてだよ、僕」 「これから毎年、結くんも固定メンバーな!」 「んだんだ!秀兄の嫁さんになってくれるんだべ?」 「…………っ!?」 「家族だ家族♪一人っ子なら、秀が入り婿すりゃいいだけだもんな」 「婚約成立だべよ」 「んだんだ!」 「…………っ、」 すっかり話が出来上がってしまっていた。

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