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第1話(4)
「めちゃくちゃ重かったし途中で寝ちゃうし……やっとベッドに降ろしたと思ったら抱き締められて動けないし」
「抱き……」
店長の声が掠れていてちょっとイイ。
腕はギリギリと押さえたままゆっくり顔を近づけた。
にっこり笑うと、店長はヒクッと口元を引きつらせる。
「お前、力強……」
逃げようとする体を足にも力を入れて押さえると僕はペロッと店長の唇を舐めた。思った通り柔らかい唇。
少し離れて笑うと、店長はピクピクとこめかみを動かして怒りを顕にし始める。
「退け!佐倉!」
「嫌って言ったらどうします?」
「退けっつってんだよ!」
喉を潰す勢いで怒鳴った店長に僕は目一杯の笑顔で答えた。
「肉体労働させられて更に帰してもらえなかったのに……お礼くらい下さいよ」
「お前、フザけたことしてまだそんなこと言うか!!」
思いっきり睨んでくる目。
「フザけたこと?」
「舐めただろうが!」
血管切れそうな勢いに僕は上がった口の端が戻せない。
「あー!味見?」
「男にんなことして何が楽しんだよ!」
「えー?店長知ってるでしょ?僕、ゲイじゃないですかー!」
ケラケラと笑うと、
「退けっ!!」
店長はかなり唾を飛ばして喚いた。
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