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第2話「普段」
一度一人暮らしのアパートに戻ってシャワーを浴びてから僕のバイト先で、店長の店でもある『cafe repos 』の裏口のドアを開ける。
スタッフルームでグレーのシャツを羽織ってあくびをしながら黒のスラックスを穿いた。
昨夜は変な体勢で抱き締められていたために身動きもできなくて節々が痛い。
首に手を付いて回しながら焦げ茶のネクタイを掴むと、ドアが開いた。
「あ、さくさん。おはようございます」
「おはよー」
挨拶を返して、隣のロッカーを開ける同じ大学で1つ下のバイト、戸川 創介 を見上げる。
「え?何ですか?」
「あのさぁ、戸川って身長いくつ?」
「178ですけど?」
カバンをロッカーに入れて、着ていたシャツを脱いだ戸川の頭に右手を伸ばしてみた。
「13cm差がこのくらいだもんなぁ……その倍はデカいよなぁ」
「はい?何ですか?さくさん、また新しい男ですか?」
戸川は僕がゲイなことを知っているし、普段アプリで出会った男と関係を持っているのも話してあるから気楽でいい。
「んー?狙いのネコ見つけてさぁ」
「へぇ……」
「興味なさそう」
くすくす笑うと、戸川はネクタイを結び終えてロッカーを閉めた。
「さくさんとは趣味合いませんからね」
「僕からしたら狙いの男と暮らしてるのに手を出さない方が理解できないよ」
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