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第2話(2)
チラッと戸川を見上げると、戸川はパンッと黒いロングエプロンを広げて腰に巻く。
「俺は一途なんで?」
「他の女は抱くのに?」
振り返ってニヤリとされて、こっちも笑って挑んでやった。
「必要だから……の仕方なくですよ」
僕もエプロンを巻いてロッカーを閉めると2人でスタッフルームを後にする。
「女なんて抱いて楽しい?」
「楽しいとかそんなの関係ないんですよ」
「勃たないよ、僕。想像するだけで吐きそう」
ホールに続くドアを開けると、ちょうど目の前を塞いでいるモノ。
「あ、店長。おはようございます!」
「あぁ、はよ」
店長はチラッとこっちを見ただけですぐにキッチンに戻って行った。
僕は布巾を絞ってそれぞれのテーブルを拭き始める。
戸川はキッチンに入って仕込みを手伝いにいった。しばらくすると、
「おっはよーございまーすっ!」
元気に入ってきた添田 風兎 の登場で店の中は急に明るくなる気がする。
ちょっと長めの明るい金髪にやんちゃそうな八重歯。耳に3つずつついているピアスにちょっと緩いネクタイ。
「添田。ネクタイはちゃんと結べ」
店長がギロリと睨みを効かせると、
「こっわっ!何?昨日の酒まだ残ってんですか?二日酔い?」
添さんは僕の後ろから抱きついてきてちょっとおどける。
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