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第2話(3)
何だかんだいつもシャツのボタンは1つ開いていてネクタイはきっちり締めない。
何度言っても「息苦しくね?」と笑う23歳フリーターに、僕ら大学生のバイト組はもう何も言わなくなった。
「何?昨日、やっぱりさくちゃんだけじゃ連れて帰れなかった?」
後ろ抱きされたまま頭の上に顎を乗せられてフルフルと頭を振る。
「ちゃんと送り届けましたよ」
むぅっとすると、添さんは僕の頭を撫でてきた。
「んー!ふわっふわの髪!さくちゃん、本当に男かぁ?」
「添田。いい加減、開店準備しねぇなら邪魔だから帰れ!」
僕の髪を頬で擦りながらギュウっと抱き締められていると、店長がキッチンから少し出て来てショーケースにケーキを並べてから怒鳴る。
「へいへい。ガチギレ?30超えると酒の抜けも悪くなんのかねぇ」
添さんはやっと離れて呟きながらカウンターに置いてある小さな包みを取って開いた。ハサミを持って水に浸けながらパチンと切って器用に小さなグラスに花を飾っていく。
出来上がった花をそれぞれのテーブルに置くと、僕はグッと伸びをした。
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