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第3話(2)
「お疲れ様です!」
スタッフルームで着替えて顔を出すと、店長は一瞬眉を寄せた。
「あれ?さくちゃんじゃん!今日、とがじゃねぇの?」
添さんが空いた皿を片付けて来て、中で洗い物の手伝いをしていた水城に手渡す。
「友達と仲良さそうにしてたんで暇な僕が交代してきました!」
笑いながら水を入れるグラスを整理していると、添さんが後ろから抱きついてきた。
「あー、今日は店長と水城じゃん?癒やしがなくて辛かったわぁ」
ギューっとされるのを右手だけでポンポンと頭に触れてすぐにショーケースを覗いたり、レジの側で販売している焼き菓子にも目をやる。
「添田さんはバイトに何を求めてるんですか」
メガネを上げながらキッチンから出てきた水城はトレーを持ちながらため息を吐いた。
「うわっ!今日、これ巨峰?このジュレおいしそー」
ショーケースを開けてやりながら目を輝かせると、水城は「ありがとうございます」と微笑みながらジュレを補充していく。
水城はさらさらの黒髪に整ったバランスのいい顔立ち。焦げ茶の細いフレームのメガネで法学部の1年って感じの真面目で大人しい性格の奴だ。
「さくちゃんが前オススメしてただろ?ジュレめっちゃ出てんだよ。もう激務」
添さんがふーっと息を吐くと、
「添田、これAの5。はよ、行け」
店長がカウンターから鋭い眼光を放ちつつ、プレートを置く。
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