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第3話(3)
「んじゃ!お先にしっつれーしまーすっ!」
19時半のラストオーダーが終わってあらかたの片付けをした添さんは満面の笑みで帰っていく。
客は平日の夜はいつも来て軽く食べた後、閉店までのんびりコーヒーを飲みながら本を読む30代の常連さんと20代前半くらいの女2人組のみ。
「店長ーぉ。いい加減、無視すんの止めてもらえますか?」
カウンターから中のキッチンを覗いて、洗い終わった皿を片付けている店長に声を掛けると、ピクッと反応して一瞬手を止めた。だが、そのまままた手を動かすものの口を開くことはない。
「店長?……僕、めちゃくちゃ警戒されてるんですね」
小声で言ってくすくす笑うと、店長は皿をしまい終えてこっちを睨んだ。
「ふふっ、かわいっ」
「あ"ぁ!?」
眉間の皺が更に深くなって軽くテンションも上がる。
カウンターに背を向けて一度客席を確認してから入口のドアを見つめた。
外は様々なネオンが灯って車もほぼ途切れることなく通り過ぎていく。
ガタッと音がして客席に目をやると、2人組が帰り支度をしていた。
フッと短く息を吐き出してにこにこと笑顔になる。
会計を終えて笑顔で手を振ると、いつもの常連さんもレジに歩いてきた。
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