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第3話(6)

「あ、これって……」  立ち上がってカウンターの上を見つめる。  店長はチラッとこっちを見てすぐに手元に視線を戻した。 「店長ーぉ?どうします?」  もう一度聞いてみると、店長は舌打ちをしながらカウンター越しに顔を出す。  僕はサッと近づいてネクタイを掴むとその口を塞いだ。まぁ、噛み付かれるのは嫌だからすぐに離れる。  目を見開く店長を見れただけで満足だ。 「おま……」  驚きと戸惑いと怒りと……色んなものがゴチャ混ぜになっていそうな顔。 「ま、今日は帰りますね!お先に失礼します」  にっこり笑うと、店長はプルプル震え出した。 「さっさと帰れ!!このクソがっ!!」  ははっ。いい顔し過ぎ。  僕は笑いながらエプロンを外す。ネクタイを緩めながらスタッフルームのドアを開けて大きく息を吐き出した。 「……ヤバいなぁ。マジになりそう」  コツンとロッカーに頭をぶつけて呟く。  今まで誰とも深くは付き合って来なかったし、ノンケなんて絶対からかう程度だったのに。  僕のかわいい顔ってのに釣られて「男でもイケそう」って抱くつもりでくる男を組み敷くのが好きだ。ショックを受けたような必死にマウントを取り返そうとする姿はゾクッとする。  店長は明らかに僕を拒絶。今日のキスで完全に警戒したっぽい。  でも、まだまだ抱けなさそうなのにわくわくする。  本当、どうかしてるよ。

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