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第4話(5)
「あのアプリは出会いが目的だろ?僕は恋人探しをしている訳ではないし、一夜過ごせればそれでいい。そもそも付き合うなんて言ってないだろ?」
こういう時、もっと低い声が出たら凄みも出るのかなぁ、なんて思うと笑えてきてしまった。
「はぁ!?ヤリ逃げかよ!笑ってるとかナメてんのか!」
ガッと勢いよく胸倉を掴んできて通り過ぎようとした女がキャッと悲鳴をあげる。
ヤバいなぁ。
「フザけんなよ!お前に何度も連絡して待ってたのにお前は別の男とセックスしまくってたのか!?」
思いっきり道端でめちゃくちゃ目立つ上に、ガタイがいいのばかり相手にしてきたせいで小さい僕は簡単に軽く足が触れるかどうかなくらい体が持ち上がってしまって力が入らない。
しかも、うまく絞まっているらしく息苦しくなってきた。
「おち……」
声を出そうとしても掠れてむせる。
本気でヤバいかもしれない。
「おい!やめろ!何してんだ!!」
軽く意識が遠退きかけていた僕はぼんやりと店長の声を聞いた気がしながら情けないことに意識を失った。
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