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第4話(6)
額にひんやりとする何かを感じて目を覚ました。
「あ、起きたか?」
うまく視点が合わずぼんやりとするまま声の方を向くと、ゆっくりそのシルエットもはっきりとした形を持つ。
「あ、てんちょ……げほっ」
自分でもショックなくらい掠れた声で、更にむせた。
「起こしてやる。……水飲めるか?」
頷くと店長はペットボトルのフタを開けてサイドテーブルに置くと、僕の体をゆっくり起こして支えなが僕の口元にストローをさしたそれを持ってくる。
甘えてそのまま水を口にすると、水が染み渡る感覚にちょっとほっとした。
「ったく、あれは何だ?」
もう一度寝かせながら店長は目を細める。
「ちょっとしたトラブルですよ」
ははっと軽く笑うとゴンッと軽く手加減したようなゲンコツが落ちてきた。
「笑い事じゃねぇ」
ただでさえ怖い顔で睨まなくてもいいのに。
「とりあえず、リゾット作っといたから食べられるならこれすぐに食え。昼くらいに見に来れたら一度来てやるから……今日はここで休んでろ」
「は?」
「さっき電話したら芳井が夕方から来れるらしいからお前は今日は休んでろ」
言いながら店長はネクタイを締めて腕時計を着けた。
「いや、もう大丈夫……」
「病院行くか?」
「遠慮します……」
この圧……まだ頭がクラクラする今は素直に従うことにする。
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