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第5話(6)
「自炊しろとは言わねぇ。無理な奴も居るのは確かだからな」
床にあぐらをかくと、店長はため息を吐く。
「お前、生活感ねぇって言われた俺の部屋以上の生活感のなさだぞ」
座ったまま部屋をグルッと見回す姿を見て、僕はスニーカーを静かに脱いだ。
「それを言ったのは元カノですか?」
そのまま足元にかばんを置いて店長を見下ろす。
「あ?お前こんなんじゃ誰も連れ込めねぇだろ?ちゃんと部屋にも気を遣ってあんなアプリじゃなくてちゃんと……」
笑いながら立ち上がった店長の手首を掴むと、店長は目を細めた。
「ゲイってそうそう転がってるモンでもないですし、しかも、タイプの男となると……」
「お前ヤらなきゃ死ぬのか?」
「は?」
「見た目に反して強欲か?」
鼻で笑われて掴んでいた腕に力がこもる。
「痛てぇな!離せ!」
店長が振り払おうとするのをそのまま押し留めた。
そのまま素早く店長の襟元を掴むと右足を掛けて足払いをする。
ダァンと思いっきり店長が倒れたのを見て上に乗った。
「痛っ……なっ!!」
顔をしかめて痛みに腰を擦ろうとする腕を掴む。
「お前、何す……」
「セックスするってそんな悪いことですか?」
僕は跨がったまま怒鳴ろうとした店長の目を真っ直ぐ見つめた。
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