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第5話(7)
「別に悪いとは言ってねぇだろ!20代なんて何度でもヌけるだろうしな!」
鋭い目で睨みながら店長は僕を退けようと体を捻じる。
「店長たちノンケはそりゃすぐに相手なんて見つ……」
「バーカっ!!誰だっていつでも相手が居ると思うなよ!お前の右手は飾りか!」
振り落とされないようにしっかり掴んで店長を見下ろすと、店長は僕の言葉を遮って怒鳴った。
「は?」
「大抵は右手と何かしら使って1人でヌいてんだよ!」
まさかのセリフに言葉を失う。
思わず力も緩んでしまった隙に店長は僕を押し退けて起き上がった。
「誰でもすぐ彼女できる訳じゃねぇだろ!お前は1人のやり方知らねぇのか!」
あまりにもの形相に笑うと、店長は舌打ちをして髪を雑に掻く。
「とにかく、今朝ので懲りただろ?もうちょっとちゃんと自己管理しろ」
「……それはセックスですか?日常生活の……」
「どっちもだ!クソがっ!!」
途中で遮られて、口悪いなぁと思いつつ何となく嬉しい気がしてくるから謎だ。
「とにかくあのアプリだか何だか使って会うのはやめろ」
「えー」
「まだ懲りてねぇのかてめぇわ!!」
怒鳴られて近くにある顔にチュッとキスをすると、容赦なく後頭部をぶん殴られた。
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