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第6話「僕のモノになってよ?」
「おはようございます!」
笑顔でスタッフルームから店に出て挨拶をすると、カウンターから顔だけ出した店長は「おう」とだけ言ってすぐに顔を引っ込める。
「佐倉さん、もう大丈夫ですか?」
「うん!むしろ、昨日は急にごめんね。ありがとう!」
すぐにパタパタと走ってきた芳井に笑顔を返すと、芳井はホッとしたように胸を撫で下ろした。
「彼女との時間邪魔しちゃった?」
かわいいといつも許されてきた笑みを浮かべると芳井もにっこりと笑う。
「代わりに今夜デートなんで大丈夫ですよ!」
「そっか!なら早めに上がって彼女にいっぱいサービスしてあげて!」
布巾を絞りながらチラッと芳井を見上げた。
「同じセリフ、添田さんが言うとエロくしか聞こえないのに佐倉さんが言うと自然だから不思議ですよねぇ」
「んー?俺が何てー?」
僕からは見えていた添さんは足音もなく近付いて芳井の肩からダルんと腕を回して顔をくっつける。
「なっ!!だっ!!何でもっ!!」
驚いた芳井の反応を見て満足そうな添さん。
ケタケタ笑って楽しんでいるが、キッチンから店長はめちゃくちゃ睨んでいた。
「……添田」
ドスの効いたような低い声に添さんはクルッと向きを変えて手のひらをひらひらさせながら笑う。
「おはよーございまーっす!仕事ですね!花やりますって!」
本当、添さんは毛の生えた心臓かもね。
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