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第6話(8)

「お前、食欲ねぇ訳じゃねぇんだから、マジで、ちゃんと食えよ」  先に食べ終わった店長は皿を重ねてカップも乗せて立ち上がる。  生姜焼きのタレが絡まったキャベツの千切りを食べながらじっとその後ろ姿を見つめると、店長は気にすることもなくさっさとキッチンに消えていった。  そして、しばらくするとコーヒーのいい香りがしてくる。  僕も食べ終えて皿を重ねていると、店長はサービストレーにコーヒー2つを乗せて、右手はケーキ皿を2枚持って歩いてきた。 「ブルマン、特別な」 「え!いいんですかぁ?」 「挽いたのが残ってただけだっつの」  ケーキ皿を机の真ん中に2つ置いてカップだけのコーヒーは手渡される。  そのまま香りを楽しんでいると、店長は無言でイスに座った。 「お前、桃食え」  パッと見は不機嫌な感じで桃のタルトが乗った皿を押しやられる。  夕飯作ってくれて、コーヒー淹れてくれて、ケーキまで……サービス良すぎて笑えるな。  少し笑いながらカップを置いてケーキを口にした。 「本っ当……おいしいですよねぇ」  思わずほぅっと息を漏らすと、店長はチラッとこっちを見た。 「ケーキは店長が作ってるんじゃないんですよね?」 「妹夫婦の店から持って来てるからな」

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