58 / 255

第7話(8)

「佐倉」  店長に呼ばれてカウンターからキッチンを覗くと、店長はタッパーを置いた。 「え?」 「食え」 「……は?」 「今日のランチの残り」  かなりぶっきら棒に言って店長はさっさとキッチンの奥に行ってしまう。  キッチンからちょうど出てくるところだった戸川と目が合うと、戸川はかなり笑っていた。 「……何?」  ちょっと顔が熱い気がして顔を背けると、 「真っ赤ですよ」  戸川はいちいち教えてくる。しかも、 「それ、わざわざ作ってましたよ」 「っ!?」  少し屈んで近づいてきたと思ったら、戸川は声をひそめてニヤリと笑った。 「お前……楽しんでるだろ?」  睨んでやると、戸川は片眉を上げて意味有りげに微笑む。 「いやぁ?さくさんの攻めって効いてるんだなぁって……」 「はぁ?」 「俺もあの攻めが効いてるといいなぁってだけですよ」  笑いながらサービストレーを持った戸川はフロアに出て行って空いた皿などを片付け始めた。 「さくちゃん、何か顔赤いし……調子悪いならもうあと数分だし早めにあがれよ?」  キッチンに向かってカウンターでソーサーやスプーンの準備をしていた添さんが顔だけこっちに向ける。 「大丈……あ、ありがとうございます!」  慌ててレジに立った僕は客から伝票を受け取ってとにかく今は仕事に集中することにした。

ともだちにシェアしよう!