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第8話「合コン」
「店長、これ、ごちそうさまでした!ありがとうございました!」
お礼を言いながらタッパーを入れた袋をカウンターに置くと、店長は「ん」とだけ言ってさっさとしまう。
「いいなぁ!店長ぉ!俺も一人暮らしなんで作って下さいよー!」
僕の隣にピッタリとくっついてカウンターに凭れかかった添さんはダルンとして間延びした声を出した。
「お前はしょっちゅう女が作りに来てんだろ」
「えー?あ、紹介しましょうか?」
添さんの方を見ることもしない店長に添さんは笑いかける。
一瞬動きを止めた店長を見た添さんは「はいはい」と楽しそうにしながらササッとセットしたドリンクを運んでいった。
「また合コンですかー?いいですねぇ」
芳井が笑いながらカウンターを拭く。
合コン……女の子たちと……ってことだよなぁ。
かなりモヤモヤする。
「さくちゃんも行く?」
戻ってきた添さんに肩を組まれてありえない……と思いつつ、店長と居られるなら……と思う自分も居た。
「行こう……かな」
呟くと、店長がガシャンとボールを落として慌てて拾っている。
「いいなぁ……」
「芳井も行く?」
「彼女にバレたら殺されますよ」
笑う2人を少し見てから店長を見ると、店長は眉を寄せてチラチラと訝しむようにこっちを見ていた。
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