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第8話(3)
明後日なんて来なければいいのに……と思っていたのに思えば思うほどすぐに来た気がしてヘコむ。
20時近くなって最後の客が帰ると、僕はサービストレーに花の入ったグラスを乗せてきてため息を吐いた。
この片付けをある程度して添さんが来たら……合コンとまではいかないけど、僕だって女の子たちと飲んだ経験はある。
酔ってしなだれかかってくる姿とか、甘ったるい声とか……正直吐きそうでいい思い出ではない。
店長と居たい……それだけの思いで咄嗟に行くと言ってしまったけど……。
ちらっとキッチンの中に目をやると、店長は片付けをほぼ終えて明日の仕込みをしていた。
いつもより閉店準備に取り掛かるのも早かったし、口数も更に少ない。
ねぇ、店長?合コン、そんなに楽しみ?女の子と笑ったりなんかしてるの見たら……僕……。
考えるだけで憂鬱で、想像だけで落ち込んでしまう。
「お疲れ〜っス!おぉ!片付けもほぼ終わってるし、仕込みも早いですねぇ!期待しまくってる感じぃ?」
何度目かのため息を吐きながらノロノロと片付けていた僕はピースをしながら入ってきた添さんを見て帰りたくなった。
「楽しい夜にしましょーね?」
カウンターから身を乗り出して笑っている添さんはもう見たくない。
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