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第10話(7)

 1人シャワーを浴び直して浴室を出ると新品らしいタオルが置いてあって、拭いて仕方なく昨日も身に着けていた服を再び着てドアを開けると味噌汁のいい匂いがしてきた。  テーブルには大根、人参、ゴボウのたっぷり入った味噌汁とおにぎりが2つずつ。 「くっそ……」  舌打ちしながらだし巻き卵を運んでくると店長はさっさと座って手を合わせた。  酔ってではなく意識のしっかりした状態で太腿を使ってシてしまったことをどう思っているのかはわからないが店長はこっちを見ない。  明らかに僕を警戒しまくっているらしく、凄い勢いで食べ終えると目も合わせずにさっさと立ち上がって寝室に消えて行った。  本当に、あの行為をどう捉えたのか……。  でも、タオルを用意して僕の分も朝食をちゃんと作ってくれる辺り……店長が優し過ぎて口元がニヤけてしまう。 「かわい……」  呟きながらイスに座って手を合わせた。  相変わらず、僕好みの優しい味付け。 「おい、これ……鍵。締めたら店持って来いよ」  ネクタイを結びながら戻ってきて、言いながら床に置こうとする店長を見て僕は手を出す。 「何だよ」 「鍵なんて大事なモン、そんなとこに置かないでちゃんと渡して下さいよ」 「あ?」  店長、そこでビクつくとか……マジで食いたくなっちゃうじゃん!

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