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第10話(8)
「……怖いんですか?僕のこと」
「はぁ!?フザけんなっ!!」
ニヤリと笑うと、店長は青筋を立ててキレながら鍵を持って来て僕の手に勢いよく叩きつけようとする。
僕はその手をさっと掴んで立ち上がった。手を引きながらその後頭部を掴んでキスをする。
「いってらっしゃい!」
すぐに離れて目を見開いている店長に微笑みかけた。
「なっ、おま……」
慌てて手を引き抜いて赤くなるとか、中学生みたいな反応でまた笑ってしまう。
「男同士だぞ!フザけるのも……」
「だから、僕はゲイですって!」
ワタワタされるなんて、ただ“楽しい”しかない。
「だからって、お前……」
「好きですよ!店長!」
「はぁっ!?やめろ!からかうんじゃねぇ!」
見つめて本気で言っているのに、店長はさっき落としたらしいいつもの革のかばんを持って走り去った。
「……」
そのドタドタと逃げていく様子を見て急に寂しくなる。
「……マジ告白じゃん」
ドアが閉まる音を聞いて僕はイスに座った。
さっきスルリと出てしまったその言葉を思い出して、仰け反りながら前髪を両手で掴む。
あんなただ尽くすような前戯をして、自制しまくって挿入もなし。それなのにやたら満たされていて幸せだった。
でも、店長のちょっとした言動にドキドキして嬉しくなって、少しでもこっちを見て欲しいと思ってしまう。
「……バカ」
さっきここを出ていったばかりなのに、もう店長に会いたくて仕方なかった。
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