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第11話(6)
「いや、告ったよ?一応……」
「え!?」
「何だよ。その反応……」
ムッとしながらドライカレーをかき込むと、戸川はただ黙ってこっちを見ている。
「無言やめてよ」
ゲシッと向かいに座っている戸川の足を軽く蹴ると、戸川はふーっと長く息を吐き出した。
「……さくさんが?」
「からかうんじゃねぇって怒鳴られたけどね」
フッと笑うとドライカレーを口にして僕はテーブルに肘をつく。
「戸川は何て告った訳?」
そのままちょっと上目遣いで見つめると、戸川はコップを持って目を逸らした。
「戸川?」
そのまま少し首を傾げると戸川はそろりとこっちを向く。
「もう大学も始まるじゃん?ちゃんと告っときなよ?後悔する前に!」
「後悔……」
「一緒に住んでて一緒の大学の同じ学部……ほぼ生活一緒なんだから!ちゃんとくっついてラブっといてよ」
「……思いっきり避けられてるんですよ」
スープを飲んで微笑むと、戸川は呟いてもそもそと食事を再開した。
せめて戸川は幸せになって欲しいと思う。
僕なんかとは想ってる純粋さも期間も全然違う戸川には……。
「悪い!まだ食ってるか?来れたら早めに……」
キッチンと繋がっている奥の出窓が開いて店長が顔を出したが、僕の顔を見ると店長はさっと引っ込んでしまった。
望みのなさそうな僕の分まで幸せになってよ。
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