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第12話「危機」

 それから僕は早智子さんのお店に通うようになった。  店長は朝、開店前に仕込みの終わった惣菜とかを取りに来て、昼休憩の時には夜に人気のピンチョスとかマリネを取りに来ることを知って、お休みの火曜日の夜は食事に来ることも聞いた僕はそれ以外の夜に通うことにしたんだ。 「雅美ちゃんと一緒に来ればいいのに」  早智子さんは言いながらいつも朝に食べられるようにとタッパーを持たせてくれる。 「店長は今日は仕事だから忙しいですよ!」  笑いながらガパオライスを食べる僕に早智子さんはトムヤムクンを出してくれた。 「本当に何でも作れるんですね」  おいしい和食を作りそうなイメージ通りかと思ったら、和、洋、中、イタリアンにフレンチまで何でも出してくれるし、こんなエスニック料理も本格的でびっくりする。 「私が食べること好きでねぇ!雅美ちゃんにも色々教えたわよ!雅美ちゃんのこんなちっちゃい時から色々世話焼いてるからね!」  親指と人差し指をギュッと縮める姿を見て 「え?そんなのお腹の中じゃないですか」 「そうよ!|理華《りか》ちゃん、あ、雅美ちゃんのママね!の妊娠中から知ってるもの!」  笑うと、早智子さんは笑いながら遠くを見た。

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