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第12話(7)

 タクマの拳が店長に向かっていく。 「店ちょ……」  何とか止めたいのに体が動かないどころか頭がグラグラして視界が歪んだ。  だが、ガゴンッとやたら鈍い音に続いてガシャーンと派手に鳴り響いた音を聞いて頭を押さえながら目を細めると、ただ立っている店長と積んであったビールケースに突っ込んで倒れているタクマが見える。 「てん……ちょう?」  戸惑いながら声を出すと、店長は手に持っていた立て看板を投げてゴトンという音と共にこっちに歩いてきた。 「無事……な訳ねぇわな。空瓶数本だったにしてもビールケースって結構な衝撃だろ?」  言いながらしゃがんだ店長は僕を抱き起こそうとする。 「あ、血が……それに吐いてるから……」 「あぁ!ヘタに動かすとマズいか?」  僕は“吐いているから汚い”ってことを言いたいのに店長はちょっと違うらしい。 「お前っ!!結構血出てんじゃねぇかっ!!しかも、割れた瓶でも切れてんだろっ!!」  店長が声を荒げるとちょうど救急車の音が近づいてきた。  騒がしくなる中で早智子さんの声も聞こえてくる。  グラグラする頭のせいでなのか、ケガのせいかまた胃からせり上がってくるものが堪えられない。 「吐いて楽になるなら気にしないで吐け!」  背中を擦られるその手の温かさがとにかく心地よかった。

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