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第13話(11)
「えぇ。そうして頂ける方がこちらも安心してお預かりできます」
店長が頷くと、翔にぃは少し唇を噛んで病室を出ていった。
「雅美ちゃん、さすがね」
早智子さんが微笑むと、店長は息を吐き出してガシガシと頭を掻く。
「どっちみちあんなとこで生活すんのはどうかと思ってたからな」
「でも、店長!」
「来るか?うちに。……ただ、変なことはすんなよ」
思いっきり睨まれてさすがにコクコクと頷いた。
早智子さんは笑ってお湯がなくなったとポットを持って病室を出て行く。
「店長……」
「お前がどんな感じで実家からこっち来たかよくわかった」
控え目に声をかけると、店長はこっちをじっと見てきた。
「え?」
「……お前って男だよな?」
「何ですか、その確認」
言われているのがこのモコモコの部屋着だと気づいて布団を引き上げる。
淡いピンクでフードにはうさ耳までついたそれは……翔にぃの機嫌を少しでもよくするために昨日渡された荷物から選んで今朝慌てて着替えたものだから。
「店でのあの姿はある意味培われたものか?」
「僕の処世術ですよ。まぁ、実際かわいいですからね、僕」
ヤケになって微笑むと店長は真面目な顔で頷く。
「かわいいのは認める」
「っ!!」
そんなこと言われるなんて思わなかった僕は言葉に詰まって何となく店長の顔が見れなくなった。
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