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第14話(3)
小走りで道路を渡ってきた戸川はバイトの制服にパーカーを羽織っただけの格好で、僕の目の前までやって来る。
「あいつ、絶対家で大人しくしてねぇだろうから見て来い!だそうですよ」
言いながら戸川がポケットに手を突っ込んで笑った。
「だって!明日から大学行くし荷物……」
「読まれてますねぇ。一緒に行きますよ。荷物運び要りますよね?」
大して荷物はないんだが、まぁ、戸川に話を聞いてもらうのも悪くないか……と僕は戸川と並んで歩き始める。
「さくさん、店長とうまくいってるんですか?」
急に聞かれて僕は慌ててプルプルと首を横に振った。
「むしろ、ずっと避けられてたから!」
「でも、わざわざ仕事抜けてお見舞い行ったり……それに一緒に住むってことは……チャンスですよね!」
こっちを見られて黙り込む。
「……チャンスなのかなぁ?むしろ、下手に手を出せなくなった気がするんだけど」
「えー?一緒に住んでて手を出さないなんてって言ってたさくさんが?」
笑う戸川を唇を尖らせながら見上げると、戸川は伸びをしてからゆっくりこっちを見た。
「お陰様で雄吾と付き合うことになりまして」
「へ?」
「幸せな日々過ごしてますよ?いいんですか?さくさんは?」
余裕な戸川がちょっとムカつく。
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