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第14話(4)

「うーわぁ……」  僕のアパートに来て部屋に入った戸川は玄関で言葉を失った。 「これ……俺、要らなかったですか?」 「だから、何もないって言ったのに」  笑いながらクローゼットから真っ白のスーツケースを出す。  とりあえず、靴を脱いで上がってきた戸川はその開いたスーツケースの中を見て明らかに引いていた。  中が真っピンクのそれは翔にぃが買ってくれたものだ。 「さくさんって……どっちが素ですか?」 「んー?」  手に取った服を詰めてから顔を上げると、戸川はクローゼットの前で服を睨んでいる。 「白のかわいい系か黒のシンプル系しかないじゃないですか」 「あー、白はかわいい普段着用。黒は夜、遊ぶ用?」  にこっと笑うと、戸川はため息を吐いた。 「意味わかんないです」 「僕が戸川が着てるみたいなシャツとかジャケットを着てみ?違和感だろ?」 「バイトはシャツにネクタイですけど?」  黙ると、戸川は笑ってカーテンも窓も開けてこっちを向く。 「お兄さん……でしたっけ?今は離れて自由を手に入れてるんですから好きにしていいと思いますよ?そんなガチガチに固めてないで緩く!リラックスすればいいんじゃないですか?」  窓から入ってくる少し冷える風が頬を撫でて、揺れるカーテンを見ながら僕は小さく頷いた。

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