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第14話(5)
結局、スーツケース1つと洗顔とかを入れた紙袋1つで日用品の荷物はほぼ終わりだった。
僕の日用品より多かったのが大学のもの。
とりあえず必要な教科書をリュックに詰めてノートパソコンを手に持って運ぶ。
店長のマンションに戻ってスーツケースから服をクローゼットへとしまうと、戸川はスマホを耳に当てながらベランダに出て行った。
「では!さくさん、行きますよ?」
戻ってきた戸川に手を引かれてマンションから連れ出される。
そのまま道路を渡って店の裏口から中に入ると、スタッフルームのドアを開けた瞬間にクラッカーが鳴り響いた。
「は?」
「退院おめでとーぅ!」
にこにこ笑う添さんとほぼ同じテンションで笑う芳井。
すぐに飛び散ったクラッカーのゴミを片付けている水城と花束をくれる戸川。
4人だ。店長は居ない。
「快気祝いですよ!」
戸川にホールまで連れてこられると、そこにはたくさんの料理が並んでいて、早智子さんとあとは会ったこともない人たちが居た。
「雅美ちゃんはまだ何か作ってるから……私が紹介しようかしら?」
微笑んだ早智子さんに座らされて僕はただ瞬きをすることしかできない。
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