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第15話「生殺し」
最初に添さんがビールを注いでいた時に何となく予感はあった。
店のテーブルに突っ伏しているもの……見下ろしてため息を吐くと、添さんがククッと喉を鳴らして笑う。
「店長、本っ当!酒弱いよなぁ」
「笑い事じゃないですよ。どうするんですか」
ため息を吐くと、添さんはグッと伸びをして結んであった髪ゴムを解いてサラッと肩まで伸びた金髪を揺らした。
「さすがに今のさくちゃんに運ばせる訳にはいかないから……とが!」
「手は貸しますが添さんも運んで下さいよ」
テーブルを拭き終えた戸川は添さんが言う前に先手を打って布巾を洗いに行く。
ガシガシと頭を掻いた添さんはため息を吐いて眠っている店長を見下ろした。
僕と添さんと戸川だけが残った店内。
ホールの僅かな照明だけがついた少し薄暗い中で店長は相変わらず眉を寄せて眠っている。
「これで片付けも全部OKです」
戸川が戻ってくると、添さんは店長のかばんを僕の手に置いて更に明かりを少なくした。
「じゃあ、とがはそっち側で、さくちゃんは花束と店長のかばんをちゃんと持つこと!あと、店の鍵よろしくな!」
言いながら添さんが店長の上半身を持ち上げて左側を支えた戸川と2人で店長を立たせる。
「おっも……」
「そんな店長を前、1人でマンションまで運ばせたのは誰ですか」
イスを直しながらチラッと見ると、添さんは「さくちゃん、ちっから持ち〜」と誤摩化した。
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