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第16話「限界」
10月いっぱいで前のアパートを引き払った僕は正式に店長のマンションでお世話になることになった。
バイトにも復帰した僕は店長と共に朝食を食べて店長が先に店に行くと、洗濯をして部屋の掃除をしてから店に行く。
何とか店長との同居生活を送っていた。
「あ、添さん!おはようございます!今日は早いですね!」
スタッフルームにかばんだけ置いて腰にロングエプロンを巻いてからホールに来ると、そこにはもう添さんが居てパチンと花を切っていて挨拶をする。
「今日は学祭じゃん?こっちにも客流れてくるからなぁ」
言いながら添さんがキメ顔でこっちを見た。
そんなの全く興味のない僕はただ、布巾を絞って机を拭き始める。
「おはようございます」
水城もやってきて開店準備が整うと、笑い声を響かせながら歩いていく通りの女子大生たちを眺めた。
「戸川も今日学祭で1日仕事してるって言ってたけど……よくやるよねぇ」
「何?さくちゃんも同じ大学なのにいいの?」
呟くと、添さんは僕の肩に肘を付いて笑う。
「興味ないし、サークルは面倒だから入ってないんで」
「こんなかわいい顔してんだし、モテるだろ?」
「んー、僕は愛でる対象ってだけじゃないですか?」
面倒になって適当に答えると、添さんはなぜか納得するように頷いた。
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