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第16話(3)
「佐倉さん、食べませんか?」
顔を上げるとサービストレーを持って立っている水城が居て、何とかイスに凭れ掛かるように体を起こす。
水城は特に何も言わずに目の前にサンドイッチとコンソメスープを並べた。
「そんなに疲れましたか?」
手を合わせて意外と大口でカツサンドを頬張る水城はスープで口の中身を流すとこっちを見る。
「別にぃ……」
言いながらたまごサンドを手にしても口に運ぶ気にはならない。
今、一緒に居るのが特に突っ込むこともなく静かに食べていく水城である意味助かった。
すぐに食べ終わった水城は自分の分を片付けてそのままかばんを持ってくる。
本を開いてノートに書き始めた姿を見て、たまごサンドを置いて僕もその本を覗いてみた。
法律の難しい言葉が並んでいてほとんど意味がわからない。
「……水城って1年でしょ?」
「そうですよ?」
「もうそんな専門的なことまでやってんの?」
ペンを置いてメガネを上げた水城は小さく笑う。
「こんなに勉強できるなんて、学生の今しかないじゃないですか」
「偉いね」
すんなりと出た言葉。
だが、じんわりと響いた。
たぶん、翔にぃが望んでいるのはこういう姿。にこにこ笑って勉強を頑張るかわいい弟だろう。
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