131 / 255
第16話(4)
何とか自分の分のサンドイッチを押し込んでため息を吐いた。
大学3年の後期。
インターンシップに行っている奴も居れば、ほぼ就職内定した奴まで居る。
僕は……じっとテーブルの端を見て黙り込んだ。
正直、将来について全く考えていない訳ではない。
ナルと居たのはただ欲望を満たすためではないから。
「佐倉!お前、早めに戻って来られるか?」
奥の小窓から店長に声を掛けられて立ち上がる。
今は店長とか将来とかモヤモヤしてる時じゃない。目の前にはお客様が居て、ここはおいしい軽食と“癒やし”を提供する場だ。
スタッフルームを出る前に鏡を見つめる。
そこに居る自分に微笑んで「よしっ!」と気合いを入れた。
ホールを見回してすぐにサービストレーを持つ。
「Aの2、ドリンク持って行きますね!あ、添さん、次、Bの4、5、ドリンク出るんで先にドーナツも置いてきます!」
カウンターでサッと乗せてホールに向かいつつ、戻って来た添さんにも声を掛けた。
「りょーかいっ!さくちゃん、いい顔になってて安心だわぁ!」
ニッと笑う添さんに笑顔を返して、僕はゆったりと流れる音楽の中を歩く。
お客様と笑って、今は僕自身もその時間を楽しんで。
ともだちにシェアしよう!