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第17話(7)

「チッ!部屋行け!クソが!」  帰ってきてすぐに僕を見つけた店長は予想通り舌打ちをして冷蔵庫からミネラルウォーターを出すとコップに注いだ。  一気に飲み干してから睨みつつこっちに来て、僕からは1番遠くに置いてあった仏和辞典を手に取る。 「……お前、紙派なのか?」 「は?」  ペラペラと辞書をめくりながら言われて店長を見ると、店長は辞書を閉じてじっとこっちを見下ろしてきた。 「今時の奴は電子辞書かと思ってたけどな」 「むしろ、スマホで終わりですよ」 「……ナメてんな」  舌打ちすると店長は辞書を置いて今度はテキストを手に取る。 「……ここ綴り違ぇ」 「え?どこですか?」  指さされたところを見て板書したはずのルーズリーフを探していると、店長はそのまま部屋に戻って行った。 「これやる」  投げられた辞書が頭に当たってさすがに痛い。  擦りながらそれを手に取ると、かなり使い古された和仏辞典だった。 「持ってるだろうが、それ使いやすいからな」 「ありがとうございます!」  店長の書き込みがあるそれを胸に抱くと、店長はそのまま部屋に戻って行く。 「フランス語もできるって……ガチだな」  呟きながら辞書を開いてそのちょっと角張った文字をなぞった。

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