147 / 255
第17話(8)
大学の図書館に入っていくつか本を選んで辺りを見回すが、どこのテーブルも人が居て少し考える。
すると、ポケットに入れてあったスマホが振動して近くの棚に本を置くとスマホを取り出した。
『自習室来ません?』
それは戸川からで僕は本を抱え直すとそのまま奥に向かって歩き出す。
5つある自習室は個室になっていて2、3人で使用でき、そこなら外に声も漏れにくいから共同レポートを書く学生が使用することが多い。
ガラス戸になっていて中がよく見えるそこを歩いて行くと、すぐに戸川を見つけて僕はその戸を肘で押して開けた。
「誰か来るんじゃないのか?」
戸を閉めてから聞いてみると、戸川は少し笑いながら言いにくそうに目を逸らす。
「……幼なじみくんに何かしたのか?」
「いや、ちょっと止まんなかっただけですって」
何となく察してテーブルに本を起きながら突っ込むと戸川はプルプルと首を振った。
「止まんなかったって……ハジメテでもあるまいし」
「うーん、ずっと最後までは我慢してたんで……1回ヤったら……ですよ」
向かいの席に腰を降ろすと戸川がちょっと口ごもる。
「はぁ!?付き合い始めてそれなりに経ってただろ!?」
「それなりにって……まだ1ヶ月ですよ?」
「いや……1ヶ月も付き合ってて一緒の家に2人きりで居たらそうなるだろ!」
「暴論ですよ!さくさんだって今、店長と2人で住んでるじゃないですか!でも……え?」
まさかのこっちに話題を移されて今度は僕が目を逸らした。
ともだちにシェアしよう!