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第17話(9)

「ヤったんですか!?」  腰を上げて身を乗り出されて僕は額に手を付く。 「いつから付き合い始めたんですか!!」  期待に満ちたその言葉には何となく申し訳ない気持ちになった。  テーブルに肘をついて口元を隠しつつ戸川を見上げる。 「……かわいく見せたって誤魔化されませんよ?」 「本当……戸川には効かないよねぇ。この僕をかわいいと思わないなんて今まで女をどんな気持ちで抱いてたかむしろ興味しかないよ」  無表情で返されてグッと背もたれに凭れ掛かりながら伸びをした。 「それに感情は要らないし、かわいいと思う必要もなかっただけですよ」 「一途〜!」 「……で?店長とシたってことですよね?」  メガネをかけていた戸川がカチャッと音を鳴らしてじっとこっちを見てくる。 「……うん。シた。店長が女といい感じって聞いて……ヤったなんて聞いて……もう無理矢理抑え込んだ」  諦めて両手を軽く挙げながら吐露すると、戸川は目を見開いた。 「あの店長を……抑え込んだんですか?」  さすが……と呟いて口を開けたままの戸川を見て笑えてくる。 「店長、今、怒ってるけどねぇ。僕の面倒みるって言った責任は取ってこのまま一緒に居てくれるらしいからさ!もう逃さないよ!」 「店長も相手が悪いですね」  にこっと笑うと、戸川はスッと目を閉じて両手を顔の前で合わせた。

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