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第18話(2)
「就職先……って言っていいのかはわからないけど……一応決まってるんですよ。僕」
「そうなのね」
残念そうな早智子さんに微笑むくらいしかできない。
「明日行ってみて……ですけどね」
お茶を飲んで早智子さんの様子を窺うと、早智子さんは「ごめんね」と手を振った。
「お勉強するために大学来てるんだものね。将来もある程度決めてるわよね」
「早智子さん。……僕……本当に店長の傍に居ていいと思いますか?」
立ち上がった早智子さんの手を腰を浮かせて掴むと早智子さんはちょっとびっくりしたような顔をする。
でも、すぐににっこりと笑った。
「雅美ちゃん、はるくんの世話焼くの楽しそうよ?」
「え?怒ってません?」
「生き生きしてるわ!だから、大丈夫よ!」
僕が掴んでいた手を優しく離して両手で包み直してくれる。
「雅美ちゃんのこと、よろしくね」
グッと込み上げてくるものを押し込めてこくりと頷いて座った。
戸川にはあぁ言ったがどこか不安だったものも薄まる気がする。
再び箸を持つと、早智子さんはキッチンに戻って行った。
ポケットの中でバイブを感じて机の上にスマホを出すと、ナルからメッセージが届いている。
『明日、19時にいつものとこでいいか?』
『いや、ナルの事務所行くよ』
さっと返信してスマホを裏返すと、僕は目の前の料理にただ向き合った。
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