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第19話「変化」
あれからナ……いや、祠堂さんと話をして僕はたまにその仕事を手伝うことになった。
あんなことにはなったけど、ナルはゲイかもしれないと悩んでいた僕が中学生の頃から相談に乗ってくれた昔からの恩人だ。
しかも、家を出て一人暮らしをする決断ができたのもナルの助けがあったからだし。
とりあえずはバイトとして今のカフェ の仕事には支障をきたさない、もちろん学業が優先だからほんの体験程度で納期に余裕のある仕事を手伝うことになったのだ。
ナルは元々フリーの翻訳家で、数年前からは通訳も引き受ける会社を起ち上げて程々にやっている……と聞いているが……
「祠堂さんって何で“ナル”だったんですか?」
さすがに仕事として関わることになってタメ口をやめると祠堂さんは最初は無視し、でも、ため息を吐いて顔を上げた。
「“アナル”の“ナル”。ヤるためだけの名前だからな。だから、次にまたその名前呼んだら襲うぞ」
続いてきたシャレにならない言葉で僕は黙って……というか引いて言葉を失った。
まぁ、それ以外は至って真面目。
今までのナルのイメージからは想像できないほど祠堂さんはしっかりした仕事のデキる僕が理想とするような男だった。
ギャップがあり過ぎてムカつくが。
出会い方が違えば……純粋にただ尊敬できたと思う。
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