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第19話(2)

  ルポでのバイトを終えて早智子さんのお店で夕飯を食べてから帰宅した僕はリビングのソファーでその翻訳の仕事をするのも定番になった。  あまりにもそこでレポートだの仕事だのをする僕に見兼ねてテーブルを買ってくれたり、集中し過ぎて店長が帰ってきたのにも気づかないことも増えたほど。  背中に『Bonne continuation』と付箋が貼られていたこともあった。  頑張れ……と言いたかったのか、まぁ、お疲れ的な意味だったのだと思うが。  あの店長のちょっと角張った文字はドキドキする。  ちょうどキリがついて目の前にあった時計が目に入った僕はぐるりと周りを見た。  時刻は間もなく日付の変わる23時53分。  また店長の帰宅にも気づかなかったのか……と辞書などをまとめて部屋に向かった僕は玄関に店長の靴がないことに気づいた。  僕のスニーカーの横にいつもある大きな革靴が見当たらない。  部屋に入ってパソコンなどをテーブルに置くと僕は小走りで店長の寝室を開けた。  やはり店長の姿はなく、戻って僕の部屋の前の風呂もトイレも見たのに気配さえない。 「え……何で?」  思わず出た自分の言葉を耳で認識して更に焦る。  こんな時間まで仕事……はあり得ない。考えられるとしたら……。  僕はそのまま廊下に座り込んでガンッと床を殴りつけた。

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