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第19話(4)

「うまっ!」  お酒が入ってすぐに目をとろんとさせるのを見て僕は缶を握り締めた。  お酒は弱いと自覚していて、更に僕を警戒して普段は飲まない店長がお酒を買ってくるのはなぜか?  お酒を飲んで忘れたいほどの何かがあったのか? 「店長?」  窺うように声をかけると、目を細めた店長がソファーから落ちるようにこっちに来て僕の手にあった缶のプルトップを開ける。 「飲め!な?」  自分はテーブルの上にあった2本目に手を伸ばすとまたそれも一気に流し込んだ。 「どうしたんですか?」  あまりにもの様子に耐えられずに聞くと、店長はこっちを見てムッと口を曲げる。 「飲まねぇなら飲むぞ!」  そのまま僕の手から缶を奪ってグッとまた口をつけた。  動く喉仏を見つめて、紅く色づいた首元にドキッとする。 「店長!止めた方がいいですよ!お酒弱いのに!!」 「こうでもしねぇと!!」 「は?」 「忘れさせてくれよ……」  叫んだかと思ったら消え入るような声を絞り出して店長は缶を落としながらぐでんと僕に寄りかかってきた。  ギュッと僕の肩を握ってくる手は微かに震えている。 「……どうしたんですか?」  その大きな背中を撫でながら声を掛けると店長は黙ったまま僕をしっかり抱き締めてきた。

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