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第21話(7)
カウンターにサラダを置いた時に店長がノロノロと体を起こしたのに気づいて冷蔵庫からペットボトルを取り出す。
「飲めますか?」
まだしっかり頭が働いていないのか、ぼーっとしている店長の目の前にボトルを差し出すと、ビクッとして店長はこっちを睨んだ。
「近づ……」
掠れまくった声に自分で驚きながら喉を押さえる姿にまたグッと欲が暴走しそうになる。
直視できなくてギュッと抱き締めると、逃げようとした店長は手で押し返してくるがそれにはいつもの力はなかった。
その気怠そうな感じに僕はいつまでも落ち着かない。
「……店長。一応綺麗にしてあるけど目に毒なんで水飲んだらもうシャワー浴びて服着てくれますか?」
「おまっ」
ギュッと目を閉じて呟くとまた文句でも言おうとしたらしい店長は自分の声を耳にして黙る。
「お昼、パスタ用意してますからすぐできますよ」
離してその手にペットボトルを乗せると僕は目に入れないようにキッチンに戻った。
手を洗いながら重そうに腰を擦って歩いて行く店長がリビングから出て行くのを待つ。
パタンとドアが閉まった音を聞くと、そのままシンクに手をついて深いため息を吐いた。
店長を僕が居ないとダメなくらいに堕としたいのに、僕の方がどんどんその魅力にハマっている気がする。
「もう、何なんだよ……」
気持ちを切り替えて昼食を用意しようとしても店長に掛けてあった毛布を目にしただけでさっきまでのその姿を思い出してしまって僕はそのまましゃがみ込んだ。
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