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第21話「寂しかった?」

  クリスマスまではとにかくめちゃくちゃ当たりがキツくて側に近づくだけで手を払い除けられたりした。  そんなキスどころか触れることさえままならない時にかかってきた1本の電話。  正直、今まで何度も気づかないフリをして無視をしていたその名前。  だからこそ、そろそろ出ないとヤバいのもわかっていた。  ふーっと息を吐き出してソファーに浅めに腰掛け直すと、スマホをタップする。 『遥斗?元気か?』 「うん。忙しくてごめんね。僕は元気だよ!翔にぃは?」  聞こえてきた声に合わせて声だけでもテンションを上げたが既に早く切りたかった。  言われることはわかっているから。 『あぁ、俺も父さんも母さんも元気だ。なぁ、遥斗。久しぶりにこの年末年始は帰って来ないか?』  それを感じ取られたかと思うくらいすぐに本題を振られて焦る。 「だから、年末年始はバイトのみんなが帰省するから僕もなんて無理だって!」 『そうやって一度も帰って来てないだろう?』 「代わりにたまにだけど練習には顔を出してるじゃん」  できるだけ軽く明るく言葉を紡いだ。  僕はたまに2、3ヶ月に一度くらいのペースではあるが地元に戻って柔道教室の手伝いをしている。  まだ幼稚園児だった4歳の僕が当時中学生の翔にぃが大人を背負投げした姿に憧れたように、目を輝かせる子供たちに教える手伝いをしている。

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