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第21話(5)
実家に着くと母が小走りで出迎えてきて、父はリビングで晩酌を始めていた。
「お帰り」
「ただいま」
僕はちゃんと微笑んでいるだろうか?
「遥斗、明日の朝稽古付き合え」
「はい」
素直に答えながら喚きたいほどのモヤモヤを飲み込む。
やっぱり実家は息が詰まる。
ただ、久々に見る父と母はやたら小さく見えた。
道場に顔を出すと父も居たし、そこに母もやって来たりしたのに……家で見るとまた違って見えるのはなぜだろう?
65歳を過ぎてその背中も丸まった気がする。
「よく一緒に遊んでたみっくん覚えてる?」
「……まぁ」
「結婚したんですって!来月には赤ちゃんも産まれるって!」
ダイニングに料理を並べながらにこにこ話す母に僕は何と答えたらいいのだろう。
「大学も行かないでってお母さん嘆いてたけど、幸せそうだったわ」
「母さん、遥斗はまだ大学生だ。その話はいいだろう」
眉をひそめてお猪口を持ち上げた父。
「そうね。ただ、翔馬もいい人見つけたから遥斗もそういう人が居ると安心でしょう?」
翔にぃにそんな人が居るなんて初耳だった。
まぁ、昔からモテる人だったし、何度か女と居るのは見たこともあったんだが。
「遥斗にはまだ早い」
「そうかしら?」
ゲイである僕にはそんな時は来ないと伝えたら父と母はどんな反応をするのだろう。
男は女と結婚して立派な家庭を築くべきと信じて疑わないような両親には……言えない。
今、会いたくて仕方ないのはあのいつも睨んでいるような顔の店長だなんて……聞いたらこの両親は……。
考えるだけ無駄だと僕は思考を止めた。
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