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第21話(7)

 夕方も父と稽古に出て、19時過ぎに帰ってから順に風呂に入ると翔にぃが帰ってきていた。  すぐに帰りたいのを堪らえつつ家族で夕飯を食べて実家を出たのはもう21時。 「眠そうだな?」  運転中声を掛けられて翔にぃを見るが「うん」と答えただけであくびが出る。  朝、4時起きに加えて久々に稽古漬けにされた体は正直限界だ。  子供たちに教えているだけならいいけど朝はガチの稽古だし、夜は高校生や大人たちの相手もさせられたのだから。  節々の痛みを感じながら首を回すと、翔にぃは僕の頭に手を付いて笑う。 「父さんも母さんも喜んでたし、俺も久々にはるに会えて嬉しかったぞ。ゆっくり一緒には居られなかったけどな」  優しく言ってくるその言葉は胸に染みた。  勝手に息苦しく思っているだけで、実家(あそこ)はいつも温かい。  それはわかっている。  でも、自分を曝け出せないのはやっぱり苦しくて辛かった。  高校までの18年間で……あの強い男を目指して鍛えてくる父と見た目を活かしてかわいく居て欲しいとしてきた翔にぃのどちらにも逆らえず、更に自分の性嗜好に悩んで限界を迎えたから。 「また顔くらい出せよ?」  一定のリズムで優しく撫でられる翔にぃの手はどこか懐かしくて、車の揺れと車内の暖かさもあって僕はそのまま眠ってしまった。

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