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第21話(8)

「起きたか?」  翔にぃの声を聞きながら倒れていたシートから体を起こす。  目の前には見慣れたマンション。  いつの間にか着いていたらしい。  ハッとしてスマホの画面を見ると時刻は0時16分。  目の前過ぎて車からは部屋の窓も見えなくて店長が起きているかもわからなかった。  まぁ、普段の店長はとっくに寝ている時間だからと諦める。 「はる?」  言われて翔にぃを見ると、翔にぃは少し跳ねていたらしい僕の髪を撫で付けて微笑んだ。 「母さんたちから聞いたらしいけど……俺、秋に結婚するから。近いうちに彼女に会ってやって」  その翔にぃの顔がめちゃくちゃ穏やかでただ頷く。  いつも離れる時はうるさかった翔にぃのこんな姿に少し切なくなった。  車から降りてそのテールランプが見えなくなるまで僕はその場で見送り続ける。  翔にぃは将来共に生きていくパートナーを見つけたらしいけど……翔にぃと1つしか歳の変わらない店長もそういうことも考えたりするのだろうか。  思ったらすぐにでも店長の顔が見たくなってエントランスへの階段を駆け上がる。  エレベーターの表示を見つめながらもソワソワして……玄関の前に来るともうドキドキした。  中に入って真っ暗な室内にがっかりしながらもリビングを通り越して店長の部屋の前に立つ。 「っふ……クソが……早く帰って来い……よ」  聞こえてきた吐息混じりの声に身体の熱が一気に上がった。

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