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第23話「さほど……」

「うーわぁ……本当にくっついたんですか?」  翌日、スタッフルームで親子丼を口にしていた戸川が苦笑いをしながら味噌汁に手を伸ばす。 「どういう意味だよ」  ムッとして僕も水を飲むと、戸川はチラッと奥の小窓を見た。 「そもそもさくさんが好きになるとか信じられなかったのに本当にセフレも全部切るし」 「おい」 「店長だってあんな顔しててかわいいもの大好きで胸フェチなのにさくさんとの関係だけはあったし」 「待て。凄いこと言ってるからな!」  僕の知らなかった店長のフェチなんて聞かされて黙っていられない。  イスから立ち上がって問いただそうとすると、戸川はクルッとこっちに顔を向けた。 「本当に付き合ってるんですか?」 「昨日からね」  まだ疑うような顔に目を細めて答えてやる。  あれから改めて告白をしてやっと頷いてくれたのは日付も曖昧な深夜。 「信じられると思います!?」  それでも戸川は疑ってきて僕は机を叩いた。 「お前なぁ!!」 「おい!GW明けで学生増えてきたからお前らちょっと戻って来い!」  開いた小窓に僕と戸川は一緒に顔を向ける。 「後で食えばいいから早く来い!」  甘さの欠片もないいつもの調子に項垂れると、戸川は笑いながら立ち上がった。 「ま、あの店長ですから」  ポンポンと肩を叩かれて一緒に歩き出す。  スタッフルームを出てフロアに戻ると、満席で更に待ちもあるそれを見て僕は仕方なく仕事モードに切り替えた。

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