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第23話(2)

 バイトを終えてあがろうとする僕は一度キッチンの中を覗く。  目が合った店長はキョロッと周りを見ると小さく手招きをしてカウンターに近づいてきた。  僕もそろりの寄ると、 「早智子さんとこに惣菜受け取りに行け」 「はい?」 「今日出かけるけど用意してるってさっき連絡あった」  店長はそれだけ言ってさっさと仕事に戻ってしまう。 「じゃあ、終わるくらいにこっち来るから一緒に食べましょうか!」 「来んなっ!」  睨まれたが、その耳が赤いことに気づいてしゃがみ込んだ。 「何してんですか?」  そんな僕に気付いた戸川が不思議そうに声を掛けてきて、見上げながらもすぐには立ち上がれない。  いつもと全然変わんないかと思いきや……かわい過ぎないか!? 「はいはい、邪魔ですからあがりますよ」  戸川に無理矢理立たされると店長と目が合う。 「……ダメだ」 「はい?」 「……めっちゃ好きだ」  キュッと戸川に隠れて呟くと、ペッと戸川に投げられた。 「んー?何なに?」  添さんがフロアから戻ってくると、戸川はじっとこっちを見る。 「俺、あがりますね」 「僕もあがるって!」  添さんを無視して歩き出す戸川を慌てて追いかけようとすると、 「早く帰れっ!!添田!てめぇはさっさとこっちの運べ!」  店長が声のボリュームを上げない代わりにめちゃくちゃ睨んできた。 「こっわ!」  言いつつ笑っている添さんに会釈をして僕と戸川はスタッフルームへと向かう。 

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