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第23話(3)
「ねぇ、戸川たちってさぁ」
「何ですか?」
スタッフルームに入って戸川を見上げると、戸川はエプロンを外してクリーニング用のカゴに入れながらこっちを見る。
「一緒に寝てる?」
僕はエプロンを外す手を止めて首を傾げると、戸川はネクタイを外してロッカーを開けた。
「たまに逃げられますが、ほぼ一緒ですよ」
「そっか。……急いでるの?」
さっさと着替える戸川を見ながらやっとエプロンを外すと、戸川はシャツを放り投げて自分の真っ赤なチェックのシャツを羽織る。
「うちにそいつが腹空かせて帰ってくるんで。買い物だけして早く帰りたいんですよ!」
スラックスはそのままで革靴からスニーカーに替えるのを僕はもうぼんやり見つめた。
「いいなぁ」
「何がですか?」
呟くと、戸川は呆れたような顔をこっちに向ける。
「ラブラブじゃん」
「さっきノロケたのはどこのどなたでしたっけ?さくさんはバイト先でも四六時中一緒じゃないですか!」
バタンと勢いよくロッカーを閉めると、戸川はカバンをかけて目を細めた。
「戸川は大学もいつも一緒じゃん」
拗ねて見せると、戸川はため息を吐く。
「大学もう週1だけの人が何言ってんですか」
「大学じゃない時は家で家事してるか、翻訳の方やってるからバイトじゃない限り僕は店長と一緒じゃないもん!それに……」
声を落とすと、戸川は自転車の鍵を出すのをやめてイスに座った。
どうやら少し話を聞いてくれる気になったらしい。
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