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第23話(5)

「あ、そうなんだ!」 「大和先輩はそうでもないらしいですけど、莉音先輩は完全にクローゼットなんで言わないで下さいよ!」 「言わないよ!てか、ほぼ会わないし!」  時計を見て立ち上がりつつ真剣な顔をした戸川に笑いかける。 「あ、竹林はたまに追いかけてくるけど」 「あー、どうしてもさくさんを撮りたいらしいですよ」 「かわい過ぎるのも罪だねっ!」  にこっと笑うと、戸川は今度こそ自転車の鍵を取り出した。 「そんなことより……そもそもあの店長がデレたりするのは恐いですし、さくさんとのイチャラブとか想像できないんで……このまま変わらないで下さいね」  さっさと話を戻して「お疲れ様でしたー」と戸川は帰って行く。 「何だよ、それ」  その背中に呟いても戸川は振り返ることもなかった。 「……確かにイチャラブ……は想像できないか」  お酒を飲んでちょっと甘えてくるあの姿とかは……思い出しつつ、他の誰かに見せたくはないと思う。 「……おい、早く帰れ」  パッと小窓が開いて店長が顔を出したのをじっと見つめると、店長は目を細めてそのまま窓を閉めた。 「キスくらいしてくれてもいいじゃないですか?」 「フザけんな。とっとと帰れ」  窓をこっちから開けてそのカウンターに腕を乗せても店長は振り向きもしない。 「店長ーぉ?」 「帰れ!」 「えー?」 「うるせぇっ!!」  思いっきり睨まれて僕はため息を吐きながらしばらくその姿を見つめる。  エプロンだけ外して仕方なく裏口から出た。

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