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第23話(7)
ガチギレされて仕方なく、僕はカウンターに凭れかかってキッチンを覗く。
あんなに怒ったくせにほぼ仕込みは終わっていて、店長はご飯と卵いっぱいのスープをカップにつけた。
カウンターに出されて、僕はトレーに乗せてテーブルに運ぶ。
惣菜はそれぞれタッパーのまま並べてフォークとナイフも揃えていると、店長がカツレツを運んできた。
僕にも一皿くれて僕たちはそのまま向かい合って座る。
「食うか」
「……」
「何だよ」
素直に手を合わせない僕を睨んでくるが、僕はそのままじっと見つめ返した。
「……僕たち恋人ですよね?」
「あ?」
店長はかなり面倒くさそうにしているが、これだけはちゃんと確認したい。
「昨夜、告白に応えてくれましたよね?」
「冷めるから食うぞ」
素っ気なくフォークを持った店長の手首を掴むと、店長はため息を吐いた。
「……そうですよねぇ。僕が「僕のこと好きですよね?」って何度も聞いたのに対して頷いただけで「好き」とは言ってくれてないですもんねぇ」
「あ?」
いつものように大口でかぶりつこうとしていた店長はそのままこっちを睨み上げる。
「お前、ケンカ売ってんのか?」
フォークを置いた店長がイスに体重をかけるとギシッと音がした。
「好きって言って欲しいだけですけど?」
顔を近づけて微笑んでも店長はバチンと僕の顔を叩くのみ。
もちろん、そんな甘い言葉はその口から出てきてくれない。
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