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第24話(2)

「おい、佐倉」  肩を掴まれて振り返ると、そこには店長が居た。 「あ、おかえりなさい」  言いつつ時計を見ると21時半を回っていて、帰ってきてちょっと確認のつもりでパソコンを開いたが真剣に仕事をしていたことに気付く。 「その様子だと飯はまだなんだな?」 「あ、すいません」  謝って立ち上がると、ダイニングテーブルにはお店でよく見る皿があった。 「もしかして、夕飯準備して待ってました?」  聞くと、店長は返事もしないでそっぽを向く。 「これからはちゃんと行きますね」 「いらん」  こっちを見てくれない店長を後ろから抱き締めても店長の返事はそっけない。 「これからはちゃんと行くから待ってて」  ギュッと回した手に力を入れると店長はそれを振り払ってキッチンに入っていった。 「早く食え」  言葉はぶっきらぼうだが色々温めてくれている音がする。 「食べたら一緒にお風呂入りましょうか!」 「入るか!クソがっ!!」  先に置かれている皿に手を付けると怒鳴り声が降ってきた。 「えー?綺麗に洗ってあげますよ?明日は仕入れ行かない日でしょう?朝もゆっくりですし?」 「あ?」 「ガンガンに突いて泣かせてあげますよ!」 「フザけんなっ!!」  そう言いながらも抱きつくとそろりと手を添えてくれることを僕は知っている。  決して素直には甘えてこないけど、思いっきり泣かせてグズグズにさせると僕をしっかり抱き締めてくっついて眠りたがることを。

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