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第24話(7)
確かに目が合ったのに逸らされてもうこっちを見てくれない。
ちょっと口を尖らせながらカウンターを背にして目の前のショーケースを見つめた。
減ってきた商品を並び替えて空いたトレーはカウンターから中のキッチンへ渡す。
その時も店長はこっちを見てくれない。
何で?
さすがにおかしいと思うのに、それから店長は一度も僕に話しかけるどころか目も合わせてくれない。
「あの腕とか凄ぇよな!あぁいうめっちゃ体使った仕事してる人ってカッケェって思うけど俺はできねぇなぁ。男ばっかだし」
「そこですか!?」
「そこ重要だろー!おっぱいないと俺、死ぬぞ!!ね!店長!」
「そーだな」
添さんと芳井とは普通に話しているのに。
しかも、今、同意したのか!?どこに!?筋肉!?おっぱいか!?
詰め寄りたいのにいつも来てくれる常連さんに呼ばれて僕は渋々フロアに出た。
「さくらちゃん!今日はシフォンケーキあるかしら?」
「うん!あるよーっ!フルーツ増々にしてもらう?」
切り替えてテーブルの脇でしゃがんでにこにこ笑うと、常連さんは2人で頷いて目を輝かせる。
「じゃあ、シフォン2つ!すぐ準備するね!」
カウンターに戻る時にラビと目が合ってそっちにも微笑んでおいた。
店長が見ていて舌打ちしているのも知らずに。
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