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第24話(10)

 ドアの開く音で顔を上げると、電気を点けてため息を吐く店長が居た。 「おかえりなさい!」  パッと立ち上がって抱きつこうとすると、腕を組んで思いっきり睨まれる。  それでもその腰に手を回してくっつくと、店長は深いため息を吐いた。 「お前なぁ……電気点けろよ。で、飯くらい食えって何度も言ってんだろ」  顔を上げると一睨みしてまた店長は目を逸らす。  僕を振り解いてソファーに歩いて行った店長はリビングテーブルに置いてあった僕のスマホがちょうどメッセージでも届いたらしく音をたてて反射的に目をやった。  せめてくっつきたい僕がそばに行くと触れる前に手を払われて肩を強く押される。  後ろによろけた僕を睨んで店長は勢いよく部屋に行ってしまった。 「何……で?」    床にペタンと座って呟く。  しばらくして再び鳴ったスマホを手に取ると『早く来ねぇの?突いて欲しいんだけど』とか『まーだーかー?』と祠堂さんからメッセージがいくつか入っていて僕はそのままスマホを壁に叩きつけた。 「うるさいよ」  床に突っ伏して涙を堪える。  僕を押した店長の顔が怒ったような泣きそうな顔で……はっきりとはわからないけど、僕が原因なんだと思うとあんな顔をさせてしまう自分が許せなかった。

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